読み物

2011年9月11日 毎日新聞で「豊橋筆 筆の里嵩山工房」が紹介されました(小中学校で筆づくり教室)

2011.09.11 メディア掲載・出演

小学校で筆づくり教室
豊橋市立向山小学校で行われた「豊橋筆づくり体験」。6年生児童が「伝統」をテーマに、総合学習として地元の伝統工芸品の豊橋筆について学んだ。筆先の形を整える「仕上げ」の作業に取り組む児童の顔は真剣そのものだ。
豊橋筆の製造に携わる職人らの出前講座で、8年ほど前から「杜預はい🅂筆を広く知ってもらおう」と、小中学校などで年10回ほど開いている。
筆づくり54年の伝統工芸士山崎亘弘さんは「豊橋筆をまず知ってもらわないと始まらない」と、筆づくり教室に積極的だ。
山崎さんが作業するのは豊橋市嵩山町の「筆の里嵩山工房」。筆や道具などで足の踏み場もない50平方メートルほどの作業場に、タン、タン、タンと筆の毛をそろえる調子のいい音が響く。
山崎さんは、中学を卒業後、印刷屋に就職するつもりだったが、試験当日が大雨で試験を受けられず、筆づくりの職人になった。「雨で人生が変わりました」と笑う。「当時は1年奉公し、5年修行して一人前。住み込みで朝6時に起き、夜は9時までみっちり仕事した。ちょうど小学校で書道の授業が始まり、本当に忙しかった」と振り返る。
作業は、毛にもみ殻の灰を混ぜてもみ、毛の脂を抜く「毛もみ」や、毛先の悪い毛を取り除く「さらい」、数種類の毛を均一に混ぜ合わせる「練まぜ」、巻き付けた1本の糸で先を整える「仕上げ」など36工程。ほとんどが手作業で、毛をすぐ金ぐしがすり減るまで使い込む熟練の技が物を言う世界だ。
山崎さんは「親方から作業方法は教えてもらっても、微妙な力加減は、何度も繰り返し自分で覚えるしかない。ここで技術の差が出る。」と説明する。
近年は安い中国産に押されて注文は減っている。30年前には100人いじょういた職人もいまでは半分以下に減り、後継者の育成が一番の課題という。
インターネットでのPRや、割の合わない百貨店を通じた販売も、「とにかくPRになれば」と始めた。「実際に使ってもらい、良しあしをみてもらうことが大事。職人の仕事は値段じゃない。こつこつ積み重ね、手をかけないといい筆はできない」と山崎さん。

いっぴんメモ:
豊橋筆は吉田藩の武士の内職として発展し、200年以上の歴史がある。国内の高級筆の約7割は、豊橋で生産され、現在14人が伝統工芸士として認定されている。「豊橋筆」は「広島筆」や奈良筆」としても販売されてきた。山崎さんによると、豊橋は製造中心の職人で商売人じゃなかった。販売ルートを持たなかったため、他の産地よりあまり知られない要因にもなったという。嵩山工房では、平日に筆づくりの見学・体験を行っている。